個別表示

「熱伝導率の低い断熱材の方が、断熱性能が高いんですよね!御社の見解は違ってると思いますが・・・」




「熱伝導率の低い断熱材の方が、断熱性能が高いんですよね!御社の見解は違ってると思いますが・・・」

ご質問を受けました!
熱伝導率の問合せなので、熱伝導率を使ってご説明します。

熱伝導率とは、厚さ1mの板の両端に1℃の温度差がある時、その板の1uを通して、1秒間に流れる熱量!と定義されています。
単位はw/mk 数字が小さいほど、伝わる熱量が小さくなる!つまり、熱が伝わる「時間が増加する」!となります。

ここで重要な事は、熱が消えているわけではありません。
熱はエネルギーの移動形態であり、消える事はありません。


熱がユックリ伝わる!か、早く伝わるか!!
これが、熱伝導率が低いか高いか!の定義だと言われます。
決して伝わる熱が消えるわけでは無い事をご理解ください。

まず、熱伝導率0.02w/mkの断熱材と、熱伝導率0.04w/mkの断熱材を比較します。ここからはw/mkを省略してお話します。
熱伝導率の差は、0.02w/mkです。

つまり、断熱材両端に1℃差がある時、1秒間で熱伝導率0.02wの差が生じる事になります。
仮に外気温度が10℃から0℃に下がった場合、-10℃×熱伝導率0.02となり=-0.2wの差が生じます。
これは1秒間の差です。つまり、熱伝導率が低い、0.02w/mkの断熱材の方が、1秒間に-0.2w得をする!と考えられます。冷たい熱が、1秒間に―0.2wずつ伝わりにくくなってると考えてください。
仮に8時間かけて10℃から0℃に下がった場合、-0.2w×8時間=-5760wとなります。実際には8時間中、-0.2wずつ伝わりにくくなる事はありませんが、分かりやすくするために8時間で計算します。
つまり、8時間で-5760w得をする!と考えられます。
しかし、これは、熱伝導率の定義で考えると、1uの計算です。
35坪の家の場合、400uほどの外皮面積を有します。
この外皮面積全てに断熱材が施工されるので、掛け合わせる必要があります。
つまり、-5760w×400uとなり、=-2,304,000wの差が生じる事になります。
結果、10℃から0℃に下がった場合、0.04w/mkの断熱材と、0.02w/mkの断熱材とでは、8時間で‐2,304,000wの差が生じる事になります。
結果、0.04w/mkの断熱材より、0.02w/mkの断熱材の方が、-2,304,000w得をする事になります。
これを無理やり電力に変換すると、‐2,304,000w=-2304㎾
1Kw30円で計算すると、10℃下がる事で、-69,120円得をする計算になります。

しかし、外気温度は下がりっぱなしではありません。
必ず上昇します。
つまり、0℃から10℃の上昇した場合の計算も必要です。
計算は、先ほどの―10℃を、+10℃にするだけです。
+10℃×0.02=0.2w
つまり、暖かい熱が、1秒間に、0.2wずつ、伝わりにくくなっているわけです。

8時間かけて0℃から10℃に上昇した場合の、0.2w×8時間=5760w
5760wに×外皮面積400uをかけた=2,304,000wが、逆に、損をする計算になります。

10℃下がった時に、2,304,000w得をして、10℃上がった時に、2,404,000w損をする。つまり、行ってこい。


熱伝導率0.02w/mkの断熱材は、熱をユックリ伝えます。
冬、外気温度が下がっても、その温度をユックリ伝えます。
しかし、日中温度が上昇する時も、上昇する熱をユックリ伝えてしまいます。
寒くなるのもユックリですが、暑くなるのもユックリ・・・

熱伝導率0.04w/mkの断熱材は、熱を素早く伝えます。
冬、外気温度が下がると、その温度を素早く伝えてしまいます。
しかし、日中温度が上昇すると、上昇した温度を素早く伝えます。
すぐに寒くなりますが、すぐに温かくなる。

もう少し別の伝え方をします。

熱伝導率は、熱が伝わるスピードととらえると分かりやすいと思います。
1℃差が、1秒間で0.04w/mkと定義される断熱材は、
1℃差を0.04w/mkで割って出て来た25秒が、1℃差を伝える速度と言われます。
10℃差の場合、250秒、4分少々・・・と計算出来ます。

1℃差が、1秒間で0.02w/mkと定義される断熱材は、
1℃差を0.02w/mkで割って出て来た50秒が、伝える速度。
10℃差の場合、500秒、8分少々・・・
つまり、熱伝導率0.04w/mkの断熱材と、熱伝導率0.02w/mkの断熱材とでは、温度の伝わり方に4分ほど差が生じている!
これは、単なる計算結果ではなく、弊社の実験値とも酷似しています。

つまり、外気温度が10℃から0℃に変化した場合、4分後に0℃を感じる断熱材と、8分後に0℃を感じる断熱材。

しかし、0℃から10℃に上昇した場合、4分後に10℃を感じる断熱材と、8分後に10℃を感じる断熱材。

どちらも行ってこい


結局、トータルエネルギーで考えるとどちらも同じ!
安価な断熱材を使用すれば良い!となります。



事実、断熱等級4から5にアップさせた、Air断愛知モデルも、冷暖房費、体感、室内温度、全く変わりませんでした。
足場、諸々の費用を含めると、300万円弱の費用をかけたにもかかわらず、その効果を感じ取る事が出来ない!
もちろん、上記の計算からも推測出来ていましたが、実物でやってみないとわからない!!と判断して、断熱等級5へのアップグレード施工を行なった経緯があります。

住人曰く
「5pの断熱材を家外周部全てに貼り付けたワケですから、間違いなく効果があると思いました。見てると爽快でしたから。工法も特殊だったと聞いてます。
特殊接着剤で断熱材を接着!仕上げはジョリパット!
あんな接着剤で、飛ばないのか?と心配しましたが、2回の台風直撃でも全く問題有りませんでした。
300万円と言ってますけど、ジョリパット含めると450万円かかってます。

更に天井はグラスウール300oを追加。出来上がった時は、冬、暖房不要なのでは?と思ってたぐらいでした。
そんな想いもむなしく、去年より2週間ほど早い、10月4日に暖房を入れた事を、今でも鮮明に覚えています。5pの断熱材は何だったの??と思いながら、暖房入れました。・・・よくなった事と言えば、サイディングから塗り壁に変わって、おしゃれ感が増した事ぐらいでした、暑さ寒さは、全く変わらず」

これが、住人の感想です。

弊社の見解が正しいとは言えません。
しかし、弊社実験データ、実物データ解析、そして、上記計算から考えると、熱伝導率の低い断熱材を使用したからと言って、断熱性能が高まるとは言えないと判断しています。

こちらは、弊社断熱実験棟の各断熱材内部温度推移です。
こちらが、2024年1月7日外気温度。
こちらが、熱伝導率が最も低いと言われるキューワンボード。
外気温度とほとんど同じ温度推移。
スタイロフォームの温度推移がこちら。
ロックウールの温度推移がこちら。
セルロースファイバーの温度推移がこちら。
フェノールフォームの温度推移がこちら。
グラスウールの温度推移がこちら。
外気温度が上昇すると、各断熱材内部温度も、ほぼ同時に上昇!
外気温度が下降すると、各断熱材内部温度も、ほぼ同時に下降

計測は30分単位。
つまり、30分の計測では、外気温度とのずれを計測出来ないほど、ほぼ同時に温度が伝わっていると考えられます。上記計算で示した「4分のズレ」はあながち間違えていないと判断しています。

結果、どんなに熱伝導率が低い断熱材でも、トータルで伝わる熱量は変化しない!と判断しています。

だからこそ、断熱材ではない方法で断熱する方法を模索するべき!

この吉田の思いが、対流断熱Air断に繋がりました。

また、解説内の計算は、あくまでも、弊社独自の計算です。
必ずしも正しいとは限りません。
皆様に伝わりやすく説明している部分がある事をご理解いただけたら幸いです。