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「熱伝導率が低いほうが、断熱性能は高まると決まってるはずですが!」



「熱伝導率が低いほうが、断熱性能は高まると決まってるはずですが!」

とご質問がありました。
決してそうではないと思っています。
熱伝導率が低い断熱材は、熱の伝わり方が遅い断熱材です。
熱伝導率が低ければ低いほど、熱の伝わる速度が遅れます。

しかし、時には、早く伝わってほしい熱もあります。
冬の寒さは、遅く伝わるほどエコになります。
しかし、冬、外が暖かくなった場合、早く伝わったほうがエコです。

「冬、0℃から1℃に上がっても、所詮寒い温度、伝わらないほうがいい」

と言う人がいますが、それは違います。
冬、室内を暖房していて、少し寒さを感じた時に、設定温度20℃から21℃に、1℃上げる事があると思います。
この1℃と、外気温度が0℃から1℃に上昇する1℃は、同じです。
もちろん、室内を20℃から21℃に上げる1℃よりも、
家周辺を0℃から1℃に上げる1℃の方が、エネルギー的には膨大ですが、温度は同じ。
つまり、外気温度が1℃でも上昇したら、それが素早く室内に伝わる方がエコ。
エアコンはその分エコな暖房に切り替わります。


つまり、熱伝導率が低い断熱材は、冬、温度が下がる時にエコになります。
しかし、冬、温度が上昇する時にロスが発生するので、トータルで考えれば同じです。

逆に、熱伝導率が高い、安価な断熱材は、冬、温度が下がる時にロスになりますが、
冬、温度が上昇する時にエコになるので、トータルで考えれば同じ。

コストを考えると、安価な断熱材のほうが“お得”だと判断出来ます。

これが、「熱伝導率が低いほうが、断熱性能が高まる」わけではない理由だと言われています。

更に、熱伝導率が低い断熱材は、熱伝導率が高い断熱材と比べて、どれくらい遅いのか?実験しました。
こちらは、一般的な家を、35分の1にした縮尺模型です。
熱伝導率0.03のスタイロフォームと、熱伝導率0.02のネオマフォームで作りました。
室内14℃の状態から、-20℃の冷凍庫に投入すると、
熱伝導率0.03のスタイロフォームは5分後に10℃低下。
熱伝導率0.02のネオマフォームは7分後に10℃低下。

つまり、熱伝導率0.03の断熱材と、熱伝導率0.02の断熱材とでは、2分程度の差しか発生しない!
もちろん、実際の家では、外壁や、室内家具、家電などがあるので、
同じ速度にはならないと思いますが、断熱材の温度変化を知るうえでは参考になると思います。
こちらは、熱伝導率0.067、ジェル断で作った、35分の1縮尺模型です。
室内14℃の状態から、同じように-20℃の冷凍庫に投入。
10℃下がったのは、なんと、67分後でした。

更に、-1℃、氷点下まで下がった時間は、
熱伝導率0.03のスタイロフォームが7分後、
熱伝導率0.02のネオマフォームが10分後、
しかし、
熱伝導率0.067のジェル断は、683分、つまり、11時間と23分後でした。
まさに桁違い、熱が伝わる遅さは、モンスター級!
これが、「熱伝導率が低ければ、断熱性能が高い」とは言い切れない理由です。
ジェル断のように、熱を伝えにくくする工夫!
そしてAir断のように、熱の流れそのものを変えて、熱を伝えない工夫!
こそが、断熱性能に直結するトリガーだと考えています。
これらの情報がこれから家を建てる皆様のお役に立てれば幸いです。