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「うちの教授は、壁も窓も、熱伝導率が低い方が熱が逃げにくいので、エコになると言ってます」



「うちの教授は、壁も窓も、熱伝導率が低い方が熱が逃げにくいので、エコになると言ってます」
大学生からのご質問です。
お応えします 。
部分的には、熱伝導率が低い、高性能断熱材の方が、エコ、になるのは事実です。
しかし、時間差で、エコ同等のロスが発生すると言われます。
見逃されがちですが、このロスも計算しないと、正しい結果にはならないと思います。
こちらは、Air断東京モデル、1月の外気温度推移です。
夜間温度が下がり、明け方から温度は上昇します。

高性能断熱材の場合、夜間外気温度が下がり始めても、熱が下がりにくいので、室内温度も下がりにくく、エコになります。

一方熱伝導率が高い、安価な断熱材の場合、夜間外気温が下がり始めると、素早く熱が下がるので、室内温度も下がりやすく、ロスが生じます。
この差は30分程度。
つまり、30分で10℃下がる、安価な断熱材に対して、1時間で10℃下がる、高性能断熱材!
しかし、1時間後は、どちらも10℃下がっているので、室内に与える影響は全く変わりません。

つまり、10℃下がるのに30分遅れる、この部分だけ、高性能断熱材のほうが、エコ!となります。

しかし、明け方温度が上昇し始めると、安価な断熱材は、30分で温度が上昇しするので、室内温度も上昇し、エコになります。
一方、高性能断熱材は、1時間かけて上昇するので、室内の温度も上がりにくくロスが発生。

このように、安価な断熱材でも、高性能断熱材でも、エコとロスが交互に繰り返されます。

トータルすると、この台形部分が、安価な断熱材と、高性能断熱材の、室内に与える熱量です。
面積を計算すると、どちらも同じになります。
つまり、室内が影響を受ける熱の総量は、どちらの断熱材も変わらない!となります。熱の総量が変わらなければ、どちらかがエコで、どちらかがロスとは言えなくなります。

しかし、エコの部分だけを切り取る、偏った計算をすると、当然、熱伝導率の低い高性能断熱材を使えば使うほど、限りなくエコになる計算が成り立ちます。
しかし、現実は、そうはなりません。


室内に影響を与える、熱総量は変化していないのですから、エコに偏ったり、ロスに偏ったりすることは、理論上ありえないと言われます。

事実、高性能断熱材を使って建てた家も、他の家と同等の電気料金でした。
建てた工務店も、「変わらない事がオカシイ」とつぶやいていましたが、理論的には、「変わる事がオカシイ」となります。

「熱が逃げにくいので、エコになる」

確かに、間違ってはいませんが、それは長所だけを切り取った結果です。
熱が逃げにくい事で発生する「短所」も理解し、トータルで断熱を考える事が必要だと思います。
ご理解いただければ幸いです。