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「熱伝導率が低いのだから、断熱性能が高いはずだけど」 ご質問を受けたので、詳しく解説します。



熱伝導率とは、断熱材などの、物質中の熱の伝わりやすさを数値化したものです。
数字が大きいほど熱が伝わりやすく、数字が小さいほど熱が伝わりにくいとされています。
身近な物の中で、熱が伝わりやすい物質として銅があります。熱伝導率は403。
熱が伝わりやすいので、鍋やヤカンなどに使われます。
逆に、身近なものの中で、最も熱が伝わりにくいのが空気で、熱伝導率は0.0241。
この空気をたくさん閉じ込めた断熱材が、熱伝導率0.022を達成したフェノールフォームと言われる断熱材です。
一般的断熱材グラスウールの熱伝導率が0.05程度なので、性能は倍以上。
もちろん、価格も高価です。

この性能を確かめるために、2014年から44坪2階建ての東面の壁を改造して、
断熱材実験を開始。熱伝導率が低い、高価で高性能断熱材と、安価な断熱材を比較した結果、
全くと言っていいほど性能に差は生じませんでした


しかし、「信じられない」と多くのプロが言います。
これまで「熱伝導率至上主義」が定着し、熱伝導率が低い断熱材こそ、
断熱性能が高いと信じられて来た経緯があるからだと思います。
そして、「熱伝導率至上主義」は厳密に言えば間違ってはいません。

熱伝導率0.05のグラスウールと
熱伝導率0.022のフェノールフォームとでは、
熱伝導率では、2倍の性能差が生じています。
しかし、この2倍の性能差は、実感できる差ではないのです。

数字のマジックともいえる2倍の性能差を、身近な例でご説明します。
例えば、身近で最も熱を伝えやすい銅の熱伝導率は403
そして、同じ金属、ステンレスの熱伝導率は16
ステンレスのほうが銅よりも25倍熱伝導率が低いワケです。
つまり、ステンレスの方が、銅よりも25倍熱が伝わりにくい!
グラスウールとフェノールフォームの2倍どころではなく、25倍の差。
ステンレスの方が、銅よりも25倍、圧倒的に、断熱性能が高い事になります。

ならば、ステンレスのヤカンと、銅のヤカン、同じ火力で同じ量の水を沸騰させると、
銅のヤカンより、断熱性が高いステンレスヤカンの方が、25倍沸き上がりが遅くなるのでしょうか??
もちろん、こんな事はありません。
トータル熱量が変わらなければ、水が沸騰する時間は変わりません。
実は、熱伝導率は、小さな小さな、ミクロスケールで生じる差です。
つまり私たちが実感するような、現実的なスケールで差が生じるようなものではないのです。

もう少し分かりやすく説明します。
熱伝導率と同じようなスケール単位で、電気抵抗率と言われるものがあります。
熱伝導率同様、電気抵抗率も、高ければ電気が伝わりにくい、低ければ電気が伝わりやすい!となっています。
ステンレスの電気抵抗率は75
銅の電気抵抗率は1.55となっています。
つまりステンレスよりも銅の方が、50倍電気が伝わりやすい事になります。
だからと言って、ステンレス線よりも銅線の方が、50倍速く電球が点くのでしょうか?
もちろんそんな事はありません。どちらの線も、通電と同時に点灯します。
つまり、熱伝導率や電気抵抗率は、私たちが日ごろ認識するスケールでは差が生じないのです。
差が生じるのは、もっと大きな大きなマクロスケール。
つまり、100キロ、200キロの送電線、そして50万ボルトなど、
とても大きな電力を流す場合には、この差が目に見えて現れてきます。

家庭で100キロ、200キロの電線や、50万ボルトの電力など無関係ですよね。
熱伝導率や、電気抵抗率は、小さな小さなミクロスケールの数値。

グラスウール0.05と
フェノールフォーム0.022とでは、確かに小さな小さな差が生じます。
しかし、一般家庭レベルで、温度差となって、この差が表れる事はないのです。

そして、なによりも重要な事は、断熱材は熱を断っているわけではない事です。
銅よりも、25倍断熱性能が高いステンレスのヤカンでも、沸騰する時間に差は生じません。
つまり、断熱性が高いからといって、熱を断っているわけではないのです。
小さな、小さなミクロスケール内で、熱の伝わりが遅れるだけであって、時間が経てば熱は伝わる!これが断熱材の特性。
「断熱材」と書かれるので、いかにも熱を遮断しているかのようなイメージがありますが、熱を遮断できる材料は見つかっていません

さらに、現在の住宅は、24時間換気の義務化により、2時間に1度、全ての空気を入れ替える必要があります。
断熱材の性能など、無関係になるほど冷暖房した空気をソックリ入れ替える必要があります。つまり、空気の入れ替え経路を、根本的に見直さなければ、家の断熱性能を高める事は出来ません

そこで生まれたのがAir断です。
Air断は、24時間換気が定める、2時間に1度ではなく、10分に1度空気を入れ替えながら、対流を使って断熱性能を高めます。
根底から吸排気の経路を見直し、4つの特許を取得しました。
2015年特許が、Air断工法に類似した工法の特許
2016年特許が、Air断基本特許
2017年特許が、Air断の吸排気経路を見直しした特許
2021年特許が、Air断寒冷地versionの特許。
4つの特許で、性能を担保。
断熱材では断熱できない熱を、空気の対流で、家の外へ押し出します。
にわかに信じがたいその性能は、極寒の北海道で実証済み。

「北海道でグラスウール断熱材はあり得ない、もっと高性能な断熱材を使わなければ!!!あなたたちは北海道の寒さを知らない」

「北海道でエアコン暖房は無理、熱量が全然足りないんです。あなた逹は北海道の寒さを甘く見すぎです」

「北海道でそんな工法は不可能。すぐに結露して、それが凍って、壁を破壊、住めなくなりますよ。本州で通じても、
北海道じゃ通じないんです。北海道は特別なんです。」


北海道モデルハウス計画では、散々釘をさされ、引き受けてくれる工務店すらありませんでした。
しかし、私たちには、確信かありました。
※対流が結露を押さえ込むはず!
そして、対流だけが、断熱している!断熱材は断熱していないんだ!と。

「責任は全て我々が負います」
と言う条件の下で、北海道では当たり前の基礎断熱工事を中止。
そして、北海道ではあり得ない、床、壁、天井全て100ミリグラスウールのモデルハウスを建設しました。

そして、エアコン暖房だけで、冬季2シーズンを暖かく乗り越えました。
マイナス18℃まで下がった日も、エアコン暖房だけで、室内24℃をキープした証拠も残っています。
北海道スタッフは、モデルハウスから5分の場所に住んでいます。
自宅は大型石油ファンヒーターが24時間動いていて、リビングこそ20℃をキープしますが、
玄関は0℃、脱衣所は6℃、和室は-6℃冷たすぎて結露した水分が凍るほど。
いたるところで底冷え、靴下スリッパ必須。

しかしモデルハウスは、エアコン暖房だけで、玄関も脱衣所も、24℃をキープ。
クローゼット内部も家中どこでも、20度以下になる事はありません。
スリッパ不要で、底冷えを感じる場所すらありません。

そして極めつきは東京モデルハウス。
断熱材を一切使用していない住宅は、近年では日本初。
床下も壁も天井も、一切断熱材を使用していません。にもかかわらず、エアコンだけで冬季を暖かく乗り切りました。

かといって、断熱材を否定しているわけではありません
様々な実験を通して、熱伝導率が低ければ断熱性能が高い!と言う表現は、厳密にいえば間違っては無いものの、
一般的住宅には当てはまらないと言うのが弊社の見解です。
そして、断熱材を選ぶなら、安価な断熱材がベストだと判断しています。
あっても無くても差が生じないのですから・・・。

弊社の見解が必ずしも正しいとは言えませんが、愛知断熱材実験棟、愛知Air断モデルハウス、
北海道Air断モデルハウス、そして東京Air断無断熱材モデルハウスから得られるデータを検証する限り、
高い確率で正しいと判断しています。

ご理解いただければ幸いです。