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「結局、断熱材はいらないって事?」ご質問がありましたので解説します。



まず、春と秋は、断熱材は不要ですよね。
これは誰でも理解できると思います。
断熱材が必要なのは夏と冬です。
まず夏季のデータをご覧いただきながら解説します。

こちらは2020年、岐阜県に建てられた、断熱モンスターと言われた物件です。
屋根に100o、天井に300o、壁に100o、さらに外周部を100o断熱材でスッポリ取り囲んだ外断熱、
そして基礎の外周部を100o断熱材でスッポリと取り囲んだ基礎断熱、サッシには樹脂サッシ、
ガラスにはトリプルガラスを使用した、超高断熱、超高気密、断熱関連費用だけで600万円を超える、
当時、断熱モンスターと言われた物件です。※Air断物件ではありません。

室内温度は、エアコンの使用状況で変わってくるので、家の性能が最も出やすい小屋裏平均温度で比較していきます。
断熱モンスター物件の、6月〜8月の外気平均温度が25.7℃、そして、小屋裏平均温度が31.6℃でした。外気平均温度と、小屋裏平均温度の差は約6℃。

対する物件は、築18年、オールグラスウール断熱、木造住宅、断熱モンスター物件とはランクが全く違う低性能断熱住宅データです。
6月〜8月の外気平均温度が27.3℃、小屋裏平均温度は、30.9℃。
外気平均温度と、小屋裏平均温度の差は3.6℃。
断熱モンスター物件よりも外気平均温度が高く、断熱性能が悪いにも関わらず、小屋裏平均温度は断熱モンスター物件よりも0.7℃低くなっています。
夏季の小屋裏は、太陽光の影響で、50℃を超える事もあります。断熱モンスター物件では、その熱を遮るために、屋根断熱材が採用されました。にもかかわらず、屋根断熱の無い、築18年、低性能住宅の方が温度が低かった・・・。

小屋裏温度が高ければ、当然室内温度も上昇し、エアコン使用量も増加します。断熱材がたくさん入っているのになぜなのか?


以下弊社の推測も交えて説明します。

断熱材は、熱を断っているわけではありません。
熱を断っているとしたら、その熱はどこに消えるのか?と言う問題が生じ、事実であれば、物理学が破綻します。

断熱材は、熱の伝わりを遅らせるもの!
これが断熱材本来の性質です。


断熱モンスター物件では、夏季、日中、大量の断熱材が、熱を吸収して、ユックリと室内に伝えます。
そして日没後、大量の断熱材が吸収した熱は、冷たい方に移動します。
夏季、最も温度が低いのは、冷房した室内。
つまり、冷房の効いた室内に流れ込んでいる!と考えられます。


これらの理由から、小屋裏平均温度が、低断熱住宅よりも高い結果に繋がったと推測します。

参考までに、東京モデルハウス無断熱材の家のデータがこちらです。
外気平均温度は25.9℃、断熱モンスター物件より高いにも関わらず、小屋裏平均温度は27.3℃。
外気平均温度との差は、たったの1.3℃しかありません。
50℃近くまで上昇する小屋裏の温度を、空気の対流で、素早く室外に放出。小屋裏平均温度を下げる事で、家全体の熱を下げ、エコな冷房を可能にします。

次に冬季データをご覧下さい。
こちらが断熱モンスター物件。
12月〜2月の外気平均温度は4.9℃、岐阜県の山間部なので、冬季はとても寒いです。
そして小屋裏平均温度は5.3℃
外気平均温度とほとんど変わらない小屋裏平均温度となっています。

そしてこちらが、築18年、低性能断熱住宅のデータです。
外気平均温度は、9.5℃、そして小屋裏平均温度は、10.7℃。
外気平均温度より、1.2℃高い小屋裏平均温度となっています。

つまり、断熱モンスター物件の小屋裏平均温度は、外気平均温度とほとんど変わらず、築18年低性能断熱物件では、外気平均温度より1.2℃高い事になります。

この理由は夏季同様、大量の断熱材が冷たい熱を吸収。昼夜暖房している室内の熱、小屋裏の熱をグングン奪い取っていると考えると、うまく説明が出来ます。

断熱性能を高めた、断熱モンスター物件の小屋裏平均温度は、夏季、外気平均温度より約6℃も高く、冬季、外気平均温度と変わらない。

しかし、築18年、低性能断熱住宅では、夏季、外気平均温度より3.6℃高く、冬季は外気平均温度より1.2℃高い結果となりました。

このデータが示す事は、夏季、断熱材が吸収した暑い熱は、夜間室内に流れ込み、冬季、断熱材が吸収した冷たい熱は、室内の暖房熱を奪っている、と考えられます。


ちなみに、こちらが、同じ冬季のAir断北海道モデルハウスデータです。
外気平均温度は−3℃。やはり北海道は寒いですよね。
しかし、小屋裏平均温度はなんと、5.2℃!

外気平均温度よりも、8.2℃も小屋裏平均温度が高い事になり、北海道なのに、岐阜県の断熱モンスター物件と同等の小屋裏温度をキープしてる事にもなります。

さらにこちらが、愛知Air断モデルハウスの冬季平均グラフです。
外気平均温度は、10.4℃。
小屋裏平均温度は、外気平均温度よりも7.2℃高い17.6℃。
Air断住宅以外では考えられない小屋裏平均温度です。

この熱源はどこにあるのか?

それは、小屋裏温度をよく見ると分かります。
北海道の外気温度は、1日中氷点下の日がかなりあります。
しかしそんな日でも、小屋裏温度は日中10℃を超えます。
特に天気の日中は温度が上昇・・・
つまり、屋根材や壁材が太陽光で温められた時に温度が上昇しているのです。
この屋根材や壁材の熱を、Air断の対流が家全体に運ぶ事で、温度が上昇していると判断しています。
さらに注目するのが、床下の温度です。
12月〜2月の床下平均温度は2.4℃、外気平均温度よりも5.4℃高い熱を持っています。
外気温度が−12℃に下がる日でも、床下温度は1℃をキープ、氷点下に下がる事はめったにありません。

エアコン暖房の熱に、小屋裏熱、壁の熱、そして床下熱が加わる事で、暖房効果が高まり、Air断の対流が、外部から伝わる熱を跳ね返す事で断熱効果を高めます。
これらダブルの効果が、極寒の北海道でも底冷えしない、エアコンだけで家中暖かい環境を作り出していると判断しています。

「断熱材は無くても良いのか?」

現時点で、“はい”とは言い切れません。
しかし、現状を見る限り、なくても良い気がします。


現在、大阪モデルハウス無断熱材の家を計画しています。2棟目、3棟目と実績を積み上げる事で、正確な答えを出せると考えています。
今しばらくお待ちいただければ幸いです。