No.352の記事

うちの教授は、断熱等級が高いほど、エコになる!と言ってますが



「うちの教授は、断熱等級が高いほど、エコになる!と言っていますが・・・」

大学生からのご質問だと思います。
現在の計算だと、そんな結果が出てきますよね。
しかし、現場は違っています。
必ずしも正しいとは言い切れませんが、解説いたします。

確かに、熱伝導率が低い材料を使用すれば、熱は伝わりにくくなります。
これは当然です。しかし、熱が伝わりにくくなる事は、長所でもあり、短所でもあります。
この「短所」が、計算に盛り込まれていない事で、現場とのギャップが生まれていると判断しています。


熱伝導率が低い断熱材を使用すれば、冬、冷たい熱が、室内に伝わりにくくなります!
だから、暖房料金が少なくて済むと言われます。
外皮計算や熱抵抗の計算では、この部分を計算しています。
しかし、冬でも日の出とともに温度は上昇します。
温度が上昇すると、熱が伝わりにくい断熱材は、上昇した熱も伝わりにくくなります!
その為、余計に暖房料金がかかります。

夏も、上昇した熱を伝えにくいのが、熱伝導率が低い断熱材です。
つまり、断熱等級が高い家ほど、上昇した熱を伝えにくい、エコな冷房に貢献します。
しかし、正午をピークに、どんどん外気温度は下がります。
この下がった熱も、伝えにくいのが、熱伝導率が低い断熱材です。
熱が下がりにくいから、余計に冷房料金がかかります。

この部分が、まったく計算されていない事が、現場とのギャップを生んでいると思います。
現在の熱抵抗計算では、
冬は、冷たい熱が入りにくくなる。
夏は、暑い熱が入りにくくなる。
この部分だけを計算しているので、熱伝導率が低い断熱材を使えば使うほど、断熱性能は、ぐんぐん高まります。
しかし、冬でも日中、暖かくなりますし、夏でも午後や、日没後は涼しくなります。この時、熱伝導率が低い、つまり、熱を伝えにくい高性能断熱材は、冬は暖かい熱を、夏は涼しい熱を取り入れにくくなります。

この部分を考慮して計算をし直すと、プラスマイナスゼロ、どんな高性能断熱材を使っても、変わらない計算結果が示されます。



熱伝導率が低い断熱材を使えば、断熱性能が高まるのであれば、とっくに、断熱論争は終わっています。
しかし、どんなに断熱性能の高い断熱材を使用しても、どれだけ気密性能を高めても、以前と変わらない!
「こんなにお金をかけて、以前の家と変わらないんじゃ、お客様に申し訳ない!」

多くの工務店が、現場で悩んだ実態から、検証を進め、分かってきたことが、「結局、熱は、同じ量伝わっている!」でした。

こちらの実験は、熱伝導率0.02、高性能断熱材を使って作った縮尺模型と、0.03一般的断熱材を使って作った縮尺模型を、冷凍庫に入れて、内部温度が下がる時間を測定した動画です。
10℃下がるのに要した時間は、一般的断熱材が5分。
高性能断熱材がが7分。その差は2分しかありません。
もちろん、それ以降は、どちらも10℃下がった断熱材の塊となるので、室内への影響も全く同じです。
つまり、5分で10℃下がる一般断熱材と、7分かかる高性能断熱材、2分エコなります。
これが長所!
そして、ここから先が短所。
冷凍庫から取り出し、10℃上昇する場合も、熱伝導率0.02高性能断熱材は7分かかります。
しかし一般的断熱材は5分で10℃上昇。
今度は、一般断熱材の方がエコになります。


しかし計算では、冬は7後に10℃下がる部分と、夏は、7分後に10℃上昇する長所だけしか計算しません。
これが「高性能断熱材の圧勝」と言う図式に繋がります。
計算が間違っているとは言いませんが、短所も含めて計算する必要があると判断しています。

もちろん、長所を短所が打ち消すので、差し引きゼロになると私たちは判断しています。
物理に詳しい方の意見は、「外気温度が上下する以上、長所を短所が打ち消さなければ、エネルギーが増加し続ける、あり得ない状態になります。物理の基本、エネルギー保存則に反します」と語っていました。


極寒北海道Air断モデルの、2024年2月暖房費は、1階エアコン料金が18,822円を記録。
この料金で、家中どこにいても寒さや底冷えを感じない、トイレもクローゼットも暖かい環境を作り出します。

断熱材は、最も安価な断熱材100ミリ。基礎断熱もしていません。
それでも、北海道では敵なしの、安価な電気料金を達成した理由は、断熱性能を、断熱材に求めたからではありません。

「断熱材はどれも同じ!」という概念で家づくりを再構築した結果が、エアコン暖房では不可能!と言われた極寒北海道で、安価な暖房費用で家中暖め、底冷え、結露のない環境に繋がった!と判断しています。

ご理解いただけたら幸いです。