No.226の記事

「熱交換換気扇を使った方が良いのでは?」 ご質問があったのでお答えします。



熱交換換気扇とは、冷暖房した熱を外に捨てる事なく、空気を入れ替える事が出来る換気扇です。

仕組みは簡単です。
まず夏季エアコンで冷房したケースを説明します。
エアコンで室内を26度にした場合、通常の換気扇だと冷房した空気をそのまま外に捨ててしまいます。
しかし熱交換換気扇は、冷房した空気を熱交換素子、分かりやすく言うとフィルターみたいな物で熱を蓄えて外部に放出しています。
次に外部から空気を取り入れる場合は、先ほど熱を蓄えたフィルターを通して空気を取り入れています。
エアコンで冷房した冷たい熱が蓄えられたフィルターを通り抜けてくることで、冷たい空気が入り込む。
熱を外部に捨てる事なく、空気の入れ替えが出来る!
これが熱交換換気扇の仕組みです。冬季は逆となります。
一見するとエコな感じがしますが、細かく調べるとエコではないと判断しています。

詳しく説明します。電気料金は1kWh26円で計算しました。
まず、一般換気扇(仕事量70㎥/h)を使用した場合、1時間で3Whの電力を消費します。
1時間の電気代は、26円×0.003kWh=0.078円
年間の電気代は、0.078円×24時間×365日=683円。
熱交換はしていないので、節約金額はありません。
24時間換気にかかる料金は年間で683円となります。

次に、熱交換換気扇を使用した場合、1時間で60Wh程度の電力を消費します。
一般的な換気扇の20倍の電力を消費します。
熱交換フィルターを通り抜けるには、それなりのパワーが必要になるからです。
1時間の電気代は、26円×0.06kWh=1.56円
年間の電気代は、1.56円×24時間×365日=13,665円
続いて、熱交換による節約金額を計算します。
熱交換による節約量は、熱交換換気扇の風量×熱交換率で決まります。
仮に最大風量が100㎥/h、熱交換率70%の場合は、100㎥/h×70%=70㎥/hが熱交換による節約量です。
エアコンが1時間に吐き出す冷暖房した空気は、約1000㎥/hと言われます。
つまり、エアコンが作り出した1000㎥/hの熱量のうち、70㎥/hを熱交換するのが、熱交換換気扇の節約量となります。
つまり7%。
つまり、エアコンが発生させる熱量の7%を、熱交換換気扇が外に捨てる事なく、空気の入れ替えをしてくれるわけです。
エアコンが1時間に消費する電力量が1kWhとすると、現在の価格では26円程度。
26円の7%は、1.82円。
つまり、1時間に1.82円節約してくれることになります。
一般的なエアコン使用量は、1日10時間程度。
そして、エアコン使用期間は大目に見て10カ月。
年間にすると、1.82円×10時間×30日×10カ月=5,460円の節約金額になります。
つまり、熱交換換気扇は、年間5,460円の節約につながりますが、その為の電気料金に13,665円必要となるワケです。
確かに、夏冬エアコン稼働時にはメリットがあります。
しかし春秋エアコンが稼働しない時期は、熱交換のメリットは無く、ただただ電気代の無駄。
トータルでは、熱交換によるメリット金額を、本体を稼働させる電気料金が上回り、逆ザヤが発生。

さらに、熱交換換気扇の本体価格は、通常の換気扇の10倍以上。
通常の換気扇が5000円〜6000円に対して、5万円〜12万円必要です。
ダクト工事費も必要で、使用後フィルターのメンテナンス、交換が必要になります。
フィルターメンテナンスや交換を怠ると、フィルターに目詰まりしたゴミを通りぬけて空気が入り込むので、家中が匂い始めます。
「フィルターで花粉やゴミをキャッチして、室内にクリーンな空気を取り入れます」
とありますが、キャッチしたゴミを通り抜けて入り込む空気を、クリーンだとは思えません。そして、花粉やゴミ、そして小さな虫など、人が衣服に付着して持ち込む量の方が数倍多いそうです。持ち込まれた花粉やゴミ、そして小さな虫も、強力なモーター、さらに高性能フィルターがキャッチして、外に出しません。
さらに、湿気の多い夏季には、フィルターが湿気ります。
フィルターには花粉、ホコリ、ゴミ、虫の死骸がたくさんあり、これらが湿気る事でカビが発生。
そこを通り抜けて空気が入り込むわけですから、新鮮な空気ではないですよね。
弊社検査員が、熱交換換気扇を取り付けた家の点検を行なった際に、強烈なカビ臭さを感じたそうです。もちろん住まい手は全くその匂いに気付かない。
体臭のきつい人が、自分の体臭に全く気付かないのと似ていると思います。
ただ、家の場合、家内部にある全てをカビ臭さが汚染します。
もちろん、頻繁にフィルターメンテナンスを行なえば、この様な結果は防げると思いますが、そこまでして熱交換換気扇を利用するメリットを見出せません。

イニシャルコスト、ランニングコスト、そして、室内環境でも、デメリットの方が多いと判断しています。

「ダクトレス熱交換換気扇はどうか?」
ともご質問があったのでお答えします。

ダクトレス熱交換換気扇は、壁に設置されます。
ダクトが無いので、ダクト工事費も掛かりません。
しかし、壁に配置されるので、外気温度の影響をもろに受けます。
冬、外気が冷たくなると、ダクトレス熱交換換気扇も冷やされます。
夏は太陽光でジリジリと熱せられます。
この影響を受け、冬は冷たい空気が、夏は暑い空気が入り込むと報告を受けました。
さらに、正逆両方向に回転するファンは、とても壊れやすいそうです。
初期コストも高く、フィルター目詰まりは、ダクト式と変わりません。

ダクト式であっても、ダクトレスであっても、デメリットが多いと判断しています。

もちろん弊社独自の見解です。電気料金の計算、熱交換換気扇の仕事量などは、平均値で計算しています。
必ずしも正しいとは言い切れません。
しかし、検査員の話や、トータル的な電気料金、メンテナンス費用を考えると、メリットは無いと考えています。