No.302の記事

岐阜のとある設計士「熱伝導率が全てだ!」



「熱伝導率が全て。熱伝導率が低い断熱材の方が性能が高い事になっているんだ、国もこれを支持している。なに言ってやがる・・・」

と岐阜の設計士から怒りのクレームを受けました。
お気持ちは分かります。
私たちもそう思っていましたから・・・
しかし、様々な物件の検査を続ける中で「オカシイ」と疑問が湧き、実験すると、確かに「オカシイ」となり、実測する為のモデルハウスを建設して、原因を調査してきました。

熱伝導率0.05のグラスウールと、0.02のフェノールフォームの断熱性能に差が生じるのであれば、それをお伝えするのがプロの役目。
しかし、様々な実験、実測を行ないましたが、差は生じませんでした。

そもそも熱伝導率とは、一部分の性質を切り取った数値です。
車に例えれば、“RPM”
エンジンの回転数のような部分的数値です。
この“RPM”が高ければ高いほど、速い車!とはなりません。
どれだけ、“RPM”エンジン回転数が高くても、パワーが無ければ速くは走れません。
“RPM”とパワーを上手に組み合わせる事が、エンジン設計にはとても重要だそうです。

家も同様、「熱伝導率が低ければ低いほど、断熱性能が上がる!」とはならないと判断しています。
熱伝導率が低いということは少しずつしか熱を伝えません。
通常10分かかるところを、熱伝導率が低くなることで20分、つまり倍の時間がかかってしまう・・・。これが熱伝導率が低くなる事によるメリット。
しかし、20分後には、断熱材自体の温度が変化してしまい、その先にある物体へ熱を伝えてしまうことになります。通常10分で伝わる熱が、20分かかってしまう!これをメリットと言えるのでしょうか?

こちらの動画は、どちらも―19℃まで冷却したフェノールフォームと木材です。
木材の熱伝導率は0.12。フェノールフォームの熱伝導率は0.02。
熱伝導率を比較すると、木材の方が6倍熱が伝わりやすい。
しかし、フェノールフォームは冷凍庫から取り出して30分後には20℃まで上昇。
対する木材が20℃を突破したのは、2時間後です。
温度の上昇が遅いという事は、熱が伝わりにくいという事。
つまり、フェノールフォームよりも熱伝導率が悪い木材の方が、断熱性能が高いと言えます。

これは、木材の密度が関係しています。
フェノールフォームより、木材の方が密度が高く、トータルの断熱性能は上。
これが、実験、実測値で得られる結果です。

つまり、「熱伝導率だけで断熱性能を考えるのではなく、密度まで計算に入れないと、本当の断熱性能は語れない!」と私たちは考えています。

もちろんこれは、実験、実測値に基づいた弊社独自の“断熱材”に対する考え方で、正しいとは言い切れません。しかし、Air断愛知モデルハウス、Air断北海道モデルハウス、Air断東京モデルハウスは、「この考え方」に基づいて建設し、実測データを解析、さらには、住人、スタッフ、来場者の意見を総合し、「この考え方」は正しいと判断しています。

現在建設中のAir断大阪モデルハウスでは、密度を考慮した、日本初となるHRT型、HRU型断熱材がベールを脱ぎます。
私たちの「考え方」が正しければ、建築の大きな躍進に繋がりますし、間違っていれば、またチャレンジします。どのような結果であれ、実証していく事が検査屋の仕事。そして、その情報を、家づくりに組み込み、より良い家づくりに繋げるのが、工務店の仕事。

そして、国が定める方向性だけを最終的な目標とするのではなく、さらにより良い家を目指して、開発努力を重ねる事が、私たちプロの義務だと思います。

これらの情報が、家づくりのプロたち、そして、これから家を建てる皆様のお役に立てれば幸いです。